―――――ある夏の昼過ぎ、喫茶店にて

 

「あっつい……」

 

そんな愚痴ともつかぬ文句が目の前の弟から聞こえてくる、今日何度目だろうか?数えることも億劫なくらいには聞いた気がする。

しかし彼を責めることは出来ないだろう、何せ本当に最近は暑い。先程体冷まそうと注文したアイスがもう解けてるくらいには暑い。吐きそうなくらい暑い。

 

「あー……アルゴ、ウォータースピアの応用で何とかできないんですか……?このままじゃ照り焼きが二つ出来ちゃいますよ……」

 

依然机に突っ伏したままの弟は気だるげにこちらに目線だけを向けて話を聞く。

 

「さっきやってみたけどなぁー……ありゃだーめだ、ぬるま湯だよ……俺が未熟なのもあるんだろうがなぁ……」

 

「あー……すみませーん!アイスコーヒーのおかわりとオレンジシャーベット二つ追加でお願いしますー」

 

はぁー……と運ばれてきたコーヒーを一口飲み一服。

この後どこかに行こうにもこう暑いとそんな気も失せてしまう。何かいい案はないだろうか……。

 

「あー、……久しぶりに川でも行くかー……」

 

「川かー……中々妙案ですねぇ……ついでに釣りでもして晩にしましょかー……」

 

……しかし僕もアルゴもアイス、シャーベット、コーヒーを飲む以外はピクリとも動かない、考えることは同じですねぇー……。

 

「いやぁー……でも動きたくねぇなぁー……」

 

「わっかるぅー、川まで行くの暑ーい」

 

「暑ーい」

 

ある夏の暑い日の事、こうして冒険者二人は冒険もせず、冷たいものを貪りながらダラーっとしていた……。

そんな兄弟の休日のお話。