タキトゥスの思い出

「おじいちゃんは、冒険者になってよかった?」

 

「そうさなぁ⋯⋯冒険者っちゅうのは悲しいことや辛いこと、たーっくさんある」

 

「儂もなぁ、何度やめちまおうかと思ったことか解ったもんじゃないわい」

 

「じゃがな、心躍る冒険にゃあどーしても敵わん」

 

「山よりもでーっかいドラゴン!死霊のうようよいる遺跡!!そして持ちきれないほどのお宝!!!」

 

「その全てが儂をまた冒険に手招きしちょる!ああ!全くもってどうしようもない!」

 

「じゃからの、タキ坊」

 

「儂は冒険者になってよかったよ」

 

「そっか、おじいちゃんはやっぱりすごいや⋯⋯」

 

「まだ儂のようになりたいか?」

 

「ううん!僕、おじいちゃんよすっごい冒険者になる!」

 

「おじいちゃんより強くなって、おじいちゃんより凄い冒険して、おじいちゃんより凄いお宝みつけるんだ!」

 

「よく言った!こりゃあ儂もまだまだ現役を退けんのぅ!」

 

はっはっは、と笑う二人の声はそのまま夜の山に響いた。

二人を見守るのは、星と月だけだった。

今日も夜が更けていく。

明日を祝福するように。